ゲスト審査員
ゲスト審査員にはファッション業界を牽引する次の5名をお招きしました。

鴨志田康人

鴨志田康人

(株)ユナイテッドアローズ UA本部 クリエイティブディレクター
UA本部クリエイティブディレクターとして、顧客に感動を与えるような素晴らしいクリエイションを探求し続けている。

【総評】

今回は大賞に推せる作品が多く、決定するのに迷いに迷いました。バッグ部門、靴部門も大いに大賞に値する作品だったと思います。いずれも、オリジナリティがあり、美観的にも優れた作品でした。今回の応募作品はこの3点に限らず説得力のあるデザイン画が多く目に止まりました。受賞された多くの作品がそうであるように、クリエイションの美しさや面白さを伝える表現力が高い作品が栄誉に輝いたと思います。台東区には、世界に誇れる優れた皮革製品の工房が集結しています。クリエイターを目指す応募者の皆さんは、是非その現場に足を運んでいただき、職人さんが培ってこられた技術をご自身の目で確かめてください。何故ならば、優秀なクリエイターになる一番の早道は、物作りのノウハウを学ぶことだからです。皆さんの豊かな感性で、日本の優れた技術力が活かされるような商品開発を、心がけて頂くことを願います。

高橋理子

高橋理子

アーティスト (株)ヒロコレッジ代表取締役
東京藝術大学大学院にて博士号(美術)を取得。円と直線のみで表現される図柄を特徴とし、プロジェクト「HIROCOLEDGE」をはじめ、ジャンルの垣根を越えた幅広い表現活動を行う。

【総評】

全体を通して、国内の社会情勢を反映しているような、大人しいデザイン画が多く見受けられたように思います。もの作りは経済活動に直接結びついているものです。素敵なものを生み出すことは当然のこととして、それに加えて、国内産業の活性化を促すようなパワーを持ったクリエイションを意識して行なうことが大切です。そのためにも、作り手との相互理解が不可欠であり、自己表現としてのデザイン画ではなく、コミュニケーションツールとしてのデザイン画、およびデザインを期待しています。受賞者の方は、もの作りから得ることのできる大きな喜びや楽しさ、苦心の末にある感動を感じたことと思います。ものの表面には見えてこない部分に、どれだけ心血を注げるかが、そのものの存在意義を大きく左右すると考えます。ぜひ、様々なことに意識を巡らせて、使い手にも作り手にも影響を与えるようなデザインをしてください。

廣田晋

廣田晋

(株)小学館 ライフスタイル誌編集局 通販事業室室長 休日研究所所長
『DIME』『BE-PAL』『サライ』の雑誌通販事業と、オリジナル商品の開発を統括。休日研究所所長として「幸せな方の生活」も研究中。

【総評】

人が「モノを買う」時、暮らしていくための日用品はほぼ全て所有している人が多い「モノ余り大国日本」では、楽しみつつも厳しい目で人は消費を楽しむ。品質・流行・金額・デザインを吟味して「今買うか?」どうかを判断する。今回のコンペティションではそんな私たちの「所有欲を刺激するデザイン」が多く見られた。そのデザインに日本の職人さんたちのモノ作りに対する真摯な姿勢と卓越した技術力が結集すれば世界を席巻できると僕は信じている。回を重ねて続いているこのコンペティションにはその原動力となるパワーがある。デザインを志す方たちは「見聞を広める深める」をモットーにしているとは思うが、その上でぜひ「疑ってみる」ことを忘れないでほしい。常識に囚われない発想が製品として魅力を高め、賛否両論が巻き起こるデザインが、商品としての可能性を高めるからだ。そのためには常識的発想とデザインを壊すことから始めよう。「靴は左右対称でなくてもいいじゃないか」「モノが入らないカバンがあってもいいじゃないか」。「議論が沸騰」し、「いらない意見とデザインが蒸発」し、「必要な要素が結晶」すれば、それはきっと自分だけの財産となることは間違いないのである。

南馬越一義

南馬越一義

(株)ビームス シニアクリエイティブディレクター
1985年ビームス入社、2004年レディース統括部長、2010年3月より現職として活動。

【総評】

デザイン画を描かれる際に、独創性、オリジナリティはデフォルトですが、そのデザインのアイテムを持つ、または身に着ける人のコーディネイトやスタイルまで想定して描かれると、そのデザイン画に、より説得力が増すのではないかなと思います。

森肇

森肇

(株)松屋 バイヤー
1998年(株)松屋入社。紳士雑貨、紳士服、販売促進などを経て現在は紳士靴、紳士鞄などの仕入れを担当。

【総評】

作品と商品の違いは一体何でしょうか? 人によって様々な捉え方もあると思いますが、「素材」「流行」「価格」「機能」の4つの要素が全て揃っているものが商品で、「価格」が無い物が作品であると私は考えます。今回初めての松屋銀座賞の選定をするにあたり、その「価格」という側面を強く想像しながら挑みました。デザイン画を描く皆さんもデザインがそれだけに終わらず、市場に出ていく事を思い、価格をイメージしてみてはいかがでしょう。きっと何かが変わるはずです。
今後も、消費者にこの4つの要素が全て受け入れられる(=商品が買われる)ことが、いかに尊いことかを一人でも多くの方と共に味わいたいと思っています。
デザインを勉強されている学生の皆さんには、ぜひデザインとは無関係なアルバイトや趣味をお勧めします。デザインの世界にどっぷり浸かるのもよいとは思いますが、人は一見関係のないモノやコトからヒントを得ることがあります。
沢山の経験で広い視野を身につけ、優れたデザインを輩出して下さい。