第13回 林きょうこ

ザッカデザイン画コンペティション13回ベルト・サスペンダー部門最優秀賞受賞者で、現在は自身のバッグブランド“Coquette”(コケット)を立ち上げ、活躍されている林きょうこさん。林さんに彼女の原点とも言える、ザッカデザイン画コンペティションについて、お話を伺った。

■受賞作品

TATTOOベルト
2002年 第13回 ベルト・サスペンダー部門最優秀賞
作品名:TATTOOベルト
作者名:林きょうこ

■受賞者インタビュー

【Q1】
在学中にデザイン画コンペ(以下、「コンペ」)に応募するときに、あなたは何を目指していましたか。

専門学校入学当初から、私はバッグデザイナーになるつもりで、自分のブランドを立ち上げること以外は考えていませんでした。
入学前には化粧品会社で働き、社会人としての経験も10数年あったのですが、ファッション業界には所属していなかったので、卒業後は、将来の自分のブランドを立ち上げるために、ノウハウ等を習得したいという気持ちでバッグの企画会社にいったん就職しました。

【Q2】
バッグデザイナーになるために前職の化粧品会社を辞めたと聞いていますが、そこまでの強い動機でバックデザイナーを志したきっかけは何だったのでしょうか。

化粧品会社に勤めているときに、自分でもどうしてか思い出せないのですが「私、バッグ作ってみる」と言い出して、そこからミシンを買い、見よう見まねでバッグを作り出しました。
その後は、先輩のセレクトショップに置いてもらったり、出張で海外に自作のバッグを持って行った時に、数人に声をかけられたりして、何となく自分でもやれるんじゃないか、なんて甘い考えを持っていました。
そんなときに、ある展示会に出展しまして、商品の見せ方やブースづくりなどできることは精一杯やったにもかかわらず、2日間誰にも何も売れず、何の成果も残せず、散々な結果に終わりました。
セレクトショップでは売れたのに、海外でも声もかけてもらったのに、なぜ売れなかったのか、誰にも気に留めてもらえなかったのかを考えた時に、自分のバッグは、デザインと金額の折り合いがついていない、商品価値の無いものだったと気づきました。
そのことに気付くと無性に悔しくなって、本気でバッグ作りをやってみたくなりました。

【Q3】
コンペの最優秀賞を受賞したことはあなたにどんな影響を与えましたか。

コンペをきっかけに台東区がデザイナーやファッションザッカ業界を支援している場所だと知り、台東デザイナーズビレッジ(※注 台東区の創業支援施設。以下、「デザビレ」)に入居しました。
デザビレに入居したことは大きな転機だったと思います。
いつかは独立をと考えていたので、入居をきっかけに実現に向かって一気に進めました。
また、デザビレに入ったことでブランドとしての姿勢(革をオリジナルで作るなど)を当初から確立することができたと思います。
デザビレに入ったからこそ、コケットを支えて頂いている革屋さん、職人さんに知り合えました。コンペの受賞作品を実際に作っていただいたベルト会社の(株)森昭さんにはブランドスタート直後に商品を作って頂き、お世話になりました。
これは今でもコケットにとって財産です。

【Q4】
実際にデザイナーとして活動するに当たり、行き詰ったり想像と違っていたりしたことはありましたか。どのように乗り越えてきましたか。

行き詰まったこと、想像と違っていたことは一言では言い表せないです。1冊の本になるくらいです。
自分の商品をどうやって売ったらよいのかも分からない、生産ラインを確保することも経験が無い中で、どこに頼んで良いのか分からない。
頼めたとしても生産にはロットが必要であっという間に資金も減って行く。
デザインすることと経営することの違い、憧れだけではご飯は食べられない。
人生の中で一番の挫折も味わいました。
乗り越える方法は「自分で自分を信じること」これしかなかったんじゃないかと思います。
自分を信じることの一つにザッカデザイン画コンテストの受賞があったのかもしれません。

【Q5】
これからコンペへの応募を考えている、ファッション業界を志す後輩たちにメッセージをお願いします。

何を目指すのかでコンペに臨む気持ちも様々だと思いますが、企業に就職を考えている方でしたら、履歴書に書けるのは有り難いのではないでしょうか。
私の場合は通っていた専門学校の先生からコンペの話を聞いて、コンペって学生みたいで楽しそう、今の自分の実力ってどんな評価なんだろうという軽い気持ちで応募してみました。
ただ、今考えると受賞はひとつの通過点にしか過ぎなかったと思います。
自分でブランドを立ち上げることを考えている方もそうですが、受賞したから将来安泰などという保障はありません。
自分自身が、受賞をどのように受け止めてその後に繋げるかが重要ではないかと思います。

受賞をきっかけに知り合える方々はきっとあなたにとってとても財産になるはずです。
それは同じ気持ちで、もの作りができる方々です。
決して浮ついていなくしっかりと地に足をつけ、何十年も同じもの作りを続けている方々です。
デザイナーとして、そういった方々に敬意を払いながら一緒に商品を作ることができるって、こんな素晴らしいことは無いと思いますよ。

■受賞者プロフィール

林きょうこ
林きょうこ

Coquette Designer
Porte de reve Designer
Coquette株式会社 代表取締役社長

(株)資生堂にて商品開発業務を経験。
退社後は、フリーとして企業のバッグ企画・デザインなどを行いながら、エスモードジャポンにてデザイン全般を学ぶ。
同校卒業後はバッグ企画、製作会社に入社。
2004年6月よりオリジナルバッグ製作(Coquette)を本格始動。年2回のコレクションを発表し、全国のセレクトショップにて展開中。