皮革の一括仕入れによってリーズナブルプライスを実現
サンバッグ坂本の前身である坂本商店は、1931年に台東区で創業した。戦前は袋物メーカーだったが、創業者である坂本幸三郎氏の英断で、昭和20年代に入り、は虫類バッグの製造を始めた。その後、高度経済成長期を経て、国内有数の専門メーカーへ成長した。
バブル崩壊やアメリカの金融恐慌によって同業者が伸び悩む中、同社は堅調に売り上げを伸ばしている。その経営手腕は、2010年11月に社長に就任した坂本収氏(49歳)によるところが大きい。
「『失敗を恐れるな。前に進め』という先代の教えにならい、10年ほど前に流通経路を思い切って見直しました。ファッション関連の見本市に積極的に出展し、取引先を開拓した結果、現在は売り上げの3割を通販会社との取引が占めるようになりました。残り7割は、問屋さんのOEMと、百貨店の催事による売り上げです」
通販は、テレビショッピングを筆頭に、大手カタログ通販、機内誌と幅広いチャンネルに露出しており、20万円前後するクロコダイルのハンドバッグが飛ぶように売れている。人気の背景には、コストパフォーマンスの高さがあると坂本社長は指摘する。
「先々代のときから、は虫類皮革の輸入商社と太いパイプを築いてきました。私どもは、商社が国内の規準に沿って仕入れた皮を一部ではなく、そっくり買い取るので、他社よりもリーズナブルな値段で製品をお出しすることができます。そうして仕入れた皮を大量にストックしているので、得意先からまとまった注文が来ても製品を安定供給できるのです」
2009年からは楽天市場でインターネット通販も始めた。メーカー直販の強みを生かし、前年比50%で売り上げを伸ばしている。
都内にある本社工場で一貫生産、アフターサービスも万全
前述のように、サンバッグ坂本は、流通に関しては、大胆な見直しを図ってきた。だが、バッグの製造に関しては、昔もいまも変わらず、完全国内生産という体制を貫いている。その理由を坂本社長は次のように話す。
「海外で生産を行わないのは、革の染めのグレードや商品の品質が自社の基準に合わないからです。小ロットであればよいのですが、ロットが大きくなると、質の悪い革が紛れ込んできます。国内なら、自分の目の届く範囲で、品質の高いものが作れます。コストがかかりますが、日本にある匠(たくみ)の技を維持したほうが結局は得策だと思っています」
牛革と違い、は虫類の革は、面積が小さく、個体差が大きい。どの部位をどの部材に使うかでバッグの表情が大きく変わる。このため、革の選別と革出し(型紙に合わせて革に印をつける作業)には、ベテランの専任者を配している。それ以外の工程は、分業制にせず、職人の誰もが革の裁断から縫製、仕上げまでをこなす技量を有している。
メイド・イン・ジャパンの繊細な技は、バッグの重量軽減にも生かされている。女性が気軽に使えるよう、できるだけ革を薄く梳(す)き、芯材に薄くて弾力のある材料を用いるなど、目に見えない工夫を施すことで、従来のハンドバッグの約半分に重さを抑えた。
最後に今後の営業戦略を坂本社長に聞いた。
「は虫類皮革のバッグは、ブランドの世界観より、素材やコストパフォーマンスを追求したほうが消費者にストレートに響きます。今後は、特徴ある染めを施した革を、輸入商社と一緒に開発したいと思っています。これまでと一線を画すクロコダイルのバッグをOEMで作りたいという企業があれば、ぜひ私どもへご連絡ください」
INFORMATION
■ 事業内容
は虫類皮革の婦人ハンドバッグ、小物および紳士小物、ベルトの製造販売
■ 代表名
坂本 収
■ OEM担当者
坂本 収
■ 資本金
3000万円
■ 従業員数
33人
■ 所在地
〒130-0026 東京都墨田区両国1-3-12
■ 電話
03-3633-2150
■ FAX
03-3633-2151
■ 取扱品目
紳士・婦人バッグ、ベルト、革小物
■ 自社ブランド
フェアリア(fairia)
■ E-mail
info@sunbag-sakamoto.co.jp