半世紀前に紳士ベルトのライセンス事業に着手
ヤマニは、年商80億を超える、業界でも屈指の袋物問屋である。1941年に中澤春吉氏(現ヤマニ相談役)が個人商店として創業。その後、紳士ベルトメーカーに転じ、60年代にいち早く、米国のブランドとライセンス契約を交わし、今日の基礎を築いた。
その後、関連会社の設立、合併を経て、現在は「メンズ事業部」、「レディス事業部」、「ゴルフ事業部」という3つの事業部で30前後のライセンスブランドの製品を百貨店や量販店、専門店に卸している。
今回インタビューを行ったのは、レディス事業部のトップを務める渡辺眞澄専務(55歳)。渡辺専務は、レディス事業部の前身である株式会社クロノス(1998年にヤマニと合併)の元社長で、メンズ商品が主力だったヤマニに婦人物という大きな柱を築いた立役者である。
「レディス事業部では、現在6つのライセンスブランドを持っています。中でも『ピンキー&ダイアン』は、ヤマニと合併する前から継続しているブランドで、今年で21年目を迎えます。このほか、『パトリックコックス』や『マーガレット・ハウエル』といった海外ブランドのバッグや財布もライセンス生産しています」
ライセンス生産といっても、シーズンごとの新商品は、レディス事業部が独自に提案しているものが多い。事業部には、5人のデザイナーが在籍しており、流行を採り入れながら、契約ブランドの世界観に沿ったバッグや財布を日々生み出している。バッグの製造は日本と中国に複数ある協力工場に委託、財布の製造はもっぱら中国で行うケースが多いという。
ブランドへの情熱がなければライセンス事業はできない
相手方ブランドのイメージ、要望に基づいて製品を企画・製造する点はOEM、ライセンスブランドとも同じである。しかし、ライセンスブランドの製品は、メーカーあるいは問屋が製品を市場に流通させなければならない。つまり、ライセンスブランドを継続させることは、オリジナルブランドを育てることに近い。ここにヤマニの強みがある。
「ライセンス契約を結ぶ場合は、通常3年から5年の販売計画をライセンサーに提出しなければなりません。もちろん、計画した期間が過ぎてもいったん契約したブランドは成長させ、継続させなければなりません。そのためには、総合的なマーケティング力も必要ですが、何よりもブランドに対する強い思い入がなければ、この仕事は務まりません」
これまでは、もっぱらライセンス事業だけに特化していたが、近年はOEMの取り組みもはじめた。その第1弾として、テレビ通販会社とオリジナルバッグを共同開発。コストを下げるため、国内のメーカーを経由せず、中国の協力工場に直接、製造を依頼した。2011年度中には、中国に拠点を設け、企画力と、生産力をさらに高める方針だ。
「レディス事業部では、百貨店のバッグや財布売り場、バッグ専門店、丸井やビブレなどのファッション専門店、この3つが主な販路でした。しかし、いまやアパレルショップや雑貨店でもバッグはたくさん置かれていますし、バッグが雑誌の付録にもなっている時代です。今後はそうした新しい業種、特にアパレルメーカーや通販会社、セレクトショップなどからバッグのOEMやコラボ企画を受託すべく、積極的に営業をしていきたいと思っています」
ブランドを育て、流通させる力を持つヤマニのレディス事業部が、OEMの分野でも躍進する日はそう遠くなさそうだ。
INFORMATION
■ 事業内容
婦人バッグ、婦人用財布の企画製造販売
■ 代表名
中澤 貞光
■ OEM担当者
渡辺 眞澄
■ 資本金
9000万円
■ 従業員数
121人
■ 所在地
〒111-0055 台東区三筋 1-15-4 ヤマニビル
■ 電話
03-5821-5044
■ FAX
03-5821-5048
■ 取扱品目
バッグ、財布
■ 自社ブランド
ピンキー&ダイアン、パトリック・コックス、マーガレット・ハウエル 他
■ E-mail
watanabemasumi@po.yamani.co.jp
