帽子
HAT

東ハット株式会社

物作り好き社長と職人が生み出す
丁寧な作りのフェルト帽子
フェルト帽子は生地に蒸気をあてて「成型」することによって生まれる。特殊な設備と熟達した技術を必要とするため、製造工場が非常に限られる帽子である。『東ハット』は東京・北区にある自社工場でひとつ、ひとつ丁寧にフェルト帽子を作り続ける貴重な会社。これぞ国産の心意気、質の高さに注目してほしい。

幼稚園児用の帽子を年10万個製造する

創業は昭和8年。現在も本社を構える東京・浅草橋で、「東浦製帽」として商いを始める。昭和27年に自社工場を持ち、以来、一貫してフェルト帽子を中心に製造を続ける。「このところ、帽子業界は製造シフトを中国に持っていく流れが続いています。でも、僕は昔から物作りが好きでね、人間より帽子とおしゃべりするほうが好きなくらい(笑)。物作りが基本の会社だから、よそには任せられません」と東浦邦治社長は話す。
同社の現在の主力商品は幼稚園児用の「園帽」。コロンとした形がかわいい黄色や紺色の園帽を毎年6万個以上製造している。夏用の麦わら帽子と合わせて年間10万個ほどの出荷となるが、「まだまだです。日本中の園帽をうちで作るのが夢だから」と東浦社長は笑う。
そのほかにも同社では、紳士向けのハンチング帽やキャスケット、中折帽、ベレー帽などを手がける。製品はすべて相手先ブランド品。有名アパレルブランドの売り場や、セレクトショップの店頭に同社の製品が並んでいる。
「フェルトでハンチング帽やキャスケットを作るのは、技術的に無理だと以前は言われていましたが、納得がいかなくてね。どうにかしてできないかと加工法を工夫するうちに形になりました」
東浦社長のもとには、自然に物作り好きの職人たちが集まる。「なんでも、うちの若い職人は、イタリアのボルサリーノを目指しているらしい。『社長、こんなの作ってみたんです』って商売にならんようなものをよく作っているよ」と笑う。だが、試しに頭頂部にドクロの型押しをした中折帽をあるブランドのバイヤーに見せたところ、「他の型も作ってほしい」とオーダーが入った。結果、頭頂部にクモの型押しをした「スパイダー」が誕生したのである(上写真参照)。

複雑な形状を可能にする高度な職人技

「ぜひ工場を見ていってください」という東浦社長に続いて中に入ると、蒸し暑い空気が顔を覆った。あちこちでプシューッとスチームが音を上げている。ふつう、布帛(ふはく)の帽子はパーツをミシンで縫うことによって形作っていくが、フェルト帽子は一体型。木製の型にかぶせたフェルト製の生地に、蒸気をあてて伸ばしていくことで望みの形に仕上げていく。このため、フェルト帽子は業界内では「型物(かたもの)」と呼ばれる。
作業を見ていて「型物を作るのは大変」と業界内で言われている理由がよく分かった。行程の最初はのり付け。「三角帽体」と呼ばれる平たい三角形をしたシンプルな帽子を、自然糊料の水溶液に漬けた後、ローラー式の脱水機で水分を絞って乾燥させる。次は、乾いてカチカチに固まった三角帽体を丸い木型にかぶせて、ホースの先から噴き出す蒸気を当てながら手で伸ばしていく。三角帽体のとがったところが次第に丸みのある頭型に変わっていくのがおもしろい。
その次は、ツバをつける行程。ゆっくりと回転する2つのローラーの間に三角帽体の端を挟み、蒸気を当てて伸ばしながらツバを作っていく。この後もヘリの部分をカットしたり、ミシンで縁取りの縫製をしたり……工程はすべて経験が必要とされる、手の感覚が頼りの作業である。完成までに実に多くの手間がかかり、そのすべてが丁寧に慈しみながら行われている。
「フェルト帽子はいろいろなデザインが生み出せるアイテムです。加工の技術には絶対の自信を持っています。物作りが好きな若い職人もたくさんそろっていますから、『これはフェルトでは無理じゃないか』と思う帽子こそご相談ください」。そう語る東浦社長の顔はなんだか楽しそうに見えた。
※東ハット株式会社は2009年11月に社長が交代し、東浦通夫氏が社長に就任しました。掲載記事は取材時(2008年9月)のものです。

INFORMATION

  • ■ 事業内容

    フエルト帽子、園帽製造

  • ■ 代表名

    東浦 通夫

  • ■ OEM担当者

    斉藤

  • ■ 資本金

    1000万円

  • ■ 従業員数

    31人

  • ■ 所在地

    〒114-0032 北区中十条3-13-3

  • ■ 電話

    03-3908-3303

  • ■ FAX

    03-3908-3340

  • ■ 取扱品目

    紳士帽子、婦人帽子、幼稚園児制帽

  • ■ E-mail

    minako@azumahat.com