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したまち小粋マーケット<上級編>

したまち小粋マーケットの成り立ちや概要を知っていただいた上で、この<上級編>では実際のモノづくりの現場に潜入してみました。ファッション雑貨づくりに注ぐ職人の情熱や技術、モノづくりの息吹を感じていただけるはずです。

モノづくりの現場といってもさまざま。靴もあれば、財布やバッグ、アクセサリーやジュエリーもあります。作るモノ、作る職人によってもその場の雰囲気やテイストは異なり、他にはない特徴があります。これがモノづくりの現場の面白さです。

まずは、メイド・イン・ジャパンの靴を作りつづけている工場を見てみましょう。整理整頓が行き届いた広々とした工場に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのはたくさんの木型やサンプル、革の原反、よく手入れされた機械、そして作業中の職人たちです。

革を丹念に吟味する作業、縫製されたアッパーをラストにのせ中底と合わせてつり込む作業、中底に本底を貼りあわせる作業。私たちの足を軽やかに美しく演出してくれる靴は、こんな風に集中力を切らさず、黙々とモノづくりに臨む職人たちによって生み出されています。

財布などの革小物製品を作っている現場にも足を運んでみました。

したまち小粋マーケットでは、デザインから生産、販売まですべてを一貫して手掛けている企業が多いのですが、革財布をメインに制作しているこの工場も同様です。

財布は数十個ものパーツでできていることをご存知でしょうか。革を型抜き(※1)し、丁寧に漉いて(※2)、床面(とこめん)(※3)を丁寧に磨きあげ、コバ処理(※4)を施し、パーツを組み立て、縫製して仕上げる。繊細さを要求される細かな作業が続きます。

仕上げと一口にいっても、へり返し(※5)、細玉取り(※6)、念(ねん)引き(※7)などさまざま。職人は作る財布によって適切な技法を駆使し、機能美にあふれた革の財布を仕上げていくのです。淡々と作業を進めていく職人の手際の良さ、手さばきの美しさは圧巻の一言でした。

最後に鞄などの革製品を作っている工場にもおじゃましました。

ここでは、大勢の職人が必要な道具を選び取り、慎重に作業を進めています。機械は使い込まれてはいるものの丁寧に整備され、道具類の一つひとつまでしっかりとメンテナンスされていました。

モノづくりの現場でいつも感じるのが職人の動きや手つきがリズミカルなことです。無駄なく手早く、それでいて焦っている様子もない。独自のペースでてきぱきと作業が進みます。その真剣な姿勢から職人の矜持が感じられました。

かといって緊迫した空気が流れているわけでもありません。革を選ぶときの眼差し、抜き型で革を抜くときの手つき、ミシンを動かす鮮やかな手さばきからうかがえるのはモノに対する深い愛情です。だからこそ、皆が真剣に作業を続けながらもモノづくりの現場にどこか温かく緩やかな空気が漂っているのでしょう。

したまち小粋マーケットに並ぶ製品は、こうしたモノづくりの現場から一つずつ丁寧に生み出されています。クラフトマンシップが生み出す選りすぐりの品々を、ぜひしたまち小粋マーケットで手にしてみてください。モノを通してきっと職人の技術とハートを感じていただけるはずです。

<注釈>

(※1)型抜き・・・切り抜きたい形状に曲げた刃型(抜き型)を革に押し当て、圧力をかけて革を抜き取る作業のこと。油圧裁断機(クリッカー)を利用するのが一般的です。

(※2)漉(す)き・・・革の厚さを製品の用途に合わせて薄く加工する作業。厚みを均一に揃えるには革漉き職人の高度な技術が不可欠です。

(※3)床面(とこめん)・・・革の裏側のこと。厚みのある革はこの床面を削って厚さを調整します。ちなみに革の表面は銀面(ぎんめん)といいます。

(※4)コバ処理・・・コバとは革の断面のこと。コバ処理とは、専用の薬品や道具を使ってこのコバの部分を磨き、美しく仕上げる作業です。

(※5)へり返し・・・革のヘリ(端)部分を返して仕上げる技法。2つ以上の革を貼り合わせているときに長めに残した外側の革を均等幅で折り返し、包み込むように仕上げます。

(※6)細玉取り・・・ふちに革を巻き、その際の部分にミシンをかけて仕上げる技法。端がほつれてしまう生地の補強するだけでなく、装飾の役割も果たします。

(※7)念(ねん)引き・・・「ネン」と呼ばれる道具を使って、革の縁に直線の筋をつけていく技法。 立体感が生まれて革が引き締まり、高級感を演出できます。