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日本でランドセルが小学校の通学に使われるようになったのは明治30年代を過ぎてから。その起源には諸説あり、陸軍大将の乃木希典が発案したとか、大正天皇が学習院に入学する際、伊藤博文が入学祝いの品として献上したともいわれる。そのため、ランドセル業界では、箱型、皮製の伝統的なランドセルを「学習院型」と呼ぶという。

大量生産と分業を排し、高い技能レベルを維持

ランドセルの製造で最も注意を要するのは革の裁断(最下段)。「革には目があるので、それを考えないで切ると、あとでボロボロになる」とは、営業部長の中村徳光さん(中段右)。同社の人工皮革は、普及品よりさらに耐久性がある。

 中村鞄製作所は、西新井大師にほど近い足立区関原で、伝統的な「学習院型」のランドセルを作り続けてきた。かつては足立区内だけでたくさんのランドセルメーカーが存在したが、海外生産や少子化の影響を受け、現在は7社に減った。というと、斜陽産業のように聞こえるが、中村鞄製作所に限ってはそうではない。毎年12月になると翌年分が完売するほど全国から注文が舞い込む。その理由は、母親たちの口コミ効果によるものだと営業部長の中村徳光さんは指摘する。
「ランドセルというのは、新品時は違いがわかりにくいものです。しかし、3年使うと、品質の差が目に見えてきます。よそのランドセルが型崩れしたり、革が剥がれたりしているのに、うちのランドセルは真新しい状態を保っている。それを見た同級生の親たちが、『それどこのランドセル?』と評判が評判を呼んでいる状況です」  同社では、すべてのランドセルで6年間修理代、送料無料の保証をうたっているものの、修理に戻されるランドセルはほとんどないという。その耐久性はどこから生まれるのか。
「まず、職人にあれもこれも作らせないことです。他社では繁忙期のみランドセルを作り、閑散期は、別の鞄を作るところがありますが、うちはランドセルしかやりません。ミシンも同様で、あれもこれも縫うと調子がおかしくなります。この部分は、このミシンでしか縫わないというように、生産を突き詰めていかないと、本当にいいものは作れません」
 職人たちは、すべて社員。外注には一切出さない。しかも、各人が裁断から縫製までこなせる技を持つ。そのレベルの高さは、第42回東京かばん技術創作コンクールで台東区長賞の受賞、平成19年度の「足立ブランド」に認定されるなど、行政からも高く評価されている。
進取の精神が、数々の先進機能を生み出す

他社に先駆けて新素材や新機構をランドセルに採り入れてきた。最上段は、同社が特許を持つ「3Dカット」という仕組み。長い髪の毛がからみにくい。職人は、すべてベテラン揃い。社長も営業部長も繁忙期は工房に入る。

 中村鞄製作所のこだわりは、生産体制だけに留まらない。生地ひとつ、部品ひとつとっても自社の仕様にしている。そのさきがけが、1960年に同社が開発した人工皮革「ニッピタイガー」だ。特殊加工によって強力な撥水効果を帯びた素材は、いまだ他社の追随を許さないほどの耐久性を備える。肩にぴったり沿うように立体的にカーブさせた肩ベルトは、いまでは当たり前となったが、同社ではすでに30年前に採用している。ほかにも特許に認定された背カン(肩ベルトの付け根)は、女子生徒の髪の毛が挟まりにくく、体の動きに合わせて動くように設計されている。
「お客様が今どんなランドセルを求めているか、どこが欠点なのかを知るために、休日はランドセルの売り場を見て歩いています。古きよきものは残して、新しいものは積極的に採り入れていく。ランドセルひと筋といっても、決して同じものを作り続けているわけではないのです」
 そんな不断の努力の結果、現在は自社ブランド製品の売上げが8割を占めるまでになった。残り2割の相手先ブランド品は、大手百貨店をはじめ同社のランドセル作りに共感する長年の取引先だ。
「これからは、中村鞄製作所の名前をもっと前面に打ち出したブランド作りをしたいと思っています。その中で、コラボレーション、共同企画といった形でオリジナルランドセルを作りたいという企業さんがあれば、我々は一切の協力を惜しまないつもりです」
 作り手の執念が使い手の満足を生み出す――日本の製造業を再生する鍵は、そんな単純な事実の中にあるのかも知れない。
有限会社中村鞄製作所 会社概要
■事業内容 ランドセル製造
■代表者名 中村 太光
■OEM担当者 中村 徳光
■資本金 990万円
■従業員数 11人
■所在地 〒123-0852 足立区江北1-32-1
■電話 03-3899-5115
■FAX 03-3899-1885
■取扱品目 ランドセル
■自社ブランド ニティランドセル
■メールアドレス info@nakamura-kaban.net
■ホームページ http://www.nakamura-kaban.net/