確かな素材選びと創造性豊かなスタッフの存在

最上段のような高級皮革を使った複雑なバックルも同社で製作できる。中段左は、社長の荒川義之さん。革の仕入れには自ら足を運ぶ。ショールームには、多種多様な素材とデザインの婦人ベルトが並ぶ(最下段)。
高級皮革専門の紳士ベルト製造会社としてスタートした吉沢商店。平成に入ってからアパレルブランドとの取引が増え、現在では婦人ベルトの製造が4割を占める。その内訳は、日本製3割、中国製7割といったバランス。そのほか、婦人バッグや財布も生産しており、年に2回大きな商品企画を行う(内1回は展示会形式で得意先を招く)意欲的な会社だ。
主力商品が紳士ベルトから婦人ベルトに移行する中、取り扱いが難しい高級皮革ベルトの生産を続けてきたのが同社の強み。「爬虫(はちゅう)類やオーストリッチといった高級皮革の買い付けには、経験がものをいう」とは荒川義之社長の言。生きているときについた傷は革の裏から見れば分かるといった風に、目利きを要する仕事だという。製造技術の前に、まず厳選した素材選びがあって、質の良いベルト作りが始まるというわけだ。
また、創業時から高級皮革を扱っているため、素材を生かすよう高度な技術力も持ち合わせている。例えば、リザード素材でベルトを100本作る場合、通常500ヶ所の革をつなぐ大変な作業を要するそうだが、そのような手間のかかる仕事も難なくこなす。牛革や豚革、合皮その他で作るベルトであっても、同様にハイクオリティだ。
「アパレルブランドからは、『こんな服に似合うベルトを』とおおまかなイメージだけを伝えられるケースもよくあります。そんなときは、腕の見せどころですね。先方のイメージをこちらでふくらませながら、革に立体感が出るように切り込みを入れたり、バックルを革で包んで印象を変えてみたり、求められたもの以上の試作品を作ります」と話すのは営業企画担当の倉田直美さん。長い付き合いの得意先からは「商談では、ゆっくり話ができなかったのに、予想以上のものできた」とよろこばれることもよくあるという。相手先ブランドの担当者の要望をくみ取る力、シーズンごとに求められる商品への理解力が備わっている。
相手先ブランドとの相乗効果で作られる流麗な商品

得意先がイメージしやすいよう素材の見本帳が豊富に用意されている(最上段)。中段左は、営業企画の倉田直美さん。年2回、展示会を企画、得意先を招いて新製品の提案を積極的に行っているという。
「ベルトには、バックルという留め具が必要不可欠です。でも、ある得意先から『バックルではなく、リボンが正面についたベルトを作ってほしい』という要望がありました。難題でしたが、やりがいもありましたね」という倉田さんは、ユニークな依頼にも快く応じてくれる頼もしい存在。「リボンの下とベルトの帯にスナップボタンを張り付けて、ポンとくっつける仕様を考えました」
このように、ファッション性を重視した難易度の高いベルト製作を求められる場合も少なくないという。例えば、女性の間でいま流行っているメッシュベルトも得意分野のひとつ。素材や編み方も豊富なパターンがあり、サンプルを集めた分厚い見本帳も用意してある。その中から編み方や色をアレンジして注文することも可能。それだけにとどまらず、技法についての研究と開発は常に続けているそうだ。
「メッシュベルト以外のすべてのベルト製作にも当てはまることですが、試作品を作って、先方にOKをもらった後でも、改良を加えるようにしています。全体のデザインは壊さないようにしながら、補強のためにステッチを1本加えたり、部分的にビーズを取り入れたり、細かい調整を行います。ベルトの表情を決める剣先(先端部分)の形状も最後まで気が抜けない部分です」
ちなみに、同社でオリジナルのメッシュベルトを試作するときは、バックルを含め15cmほどのサンプルをまず作って、イメージをつかんでもらうようにしているという。
高級皮革、メッシュ、カジュアルベルトのどれを注文しても、ベルトの端から端まで細心の注意を払いながら作ってくれる吉沢商店。完成度の高いオリジナルベルトを作りたいときは、まず同社に声をかけてみてはいかがだろう。
有限会社吉沢商店 会社概要
■事業内容 |
婦人ベルト製造 |
■代表者名 |
荒川 義之 |
■OEM担当者 |
倉田 直美 |
■資本金 |
300万円 |
■従業員数 |
6人 |
■所在地 |
〒111-0042 台東区寿1-2-3 3F |
■電話 |
03-3841-3966 |
■FAX |
03-3841-1976 |
■取扱品目 |
紳士・婦人ベルト、
婦人バッグ |
■メールアドレス |
yoshiyuki@yoshizawa-co.jp
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