布帛ものからニット、シルク製まで幅広く対応

ニ帽子作り100余年。同社にはさまざまなデザインの木型がストックされている (最上段)。製造は自社工場を中心に、凝ったシルク帽子は得意とするタイの提携工場に振り分けている。中段左は佐藤清社長。作りの良い紳士用帽子も同社の得意とするところ(最下段)。
平日の朝、ある有名男性俳優が散歩する様子を追ったテレビの人気番組をご存じの方は多いだろう。彼のハンチング帽好きは業界内では知られるところ。そのコレクションには、実は同社の帽子が含まれている。
「私物として弊社の帽子を愛用されているようです。先日は番組関係の方からご連絡をいただいて、特注のオリジナルハンチング帽をお作りしました」と、営業部長の星野喬さんは話す。
創業は明治45年。当時、帽子といえばほぼ紳士物に限られている時代である。同社は中折帽や一文字、ハンチング帽などの紳士帽子メーカーとしてスタートする。戦後はスポーツブームと機を同じくして、子供用野球キャップなどのスポーツ帽子を手がける。そして現在は布帛(ふはく)帽子とニット帽子、透けるシルク感が美しいおしゃれ帽子と幅を広げる。生産量の7割は婦人物で、その多くは相手先ブランド品である。
3代目社長の佐藤清氏はこういう。「うちは長いこと紳士物やスポーツ帽子できましたから、70年代からじわじわと、世間で婦人物のファッション帽子が伸びてきた時は正直、とまどいました。でも、技自慢の職人をたくさん抱えていましたからね、彼らが工夫して見事に対応してくれました」
職人たちのノウハウの蓄積がやがて実ることになる。平成に入って間もないころ、依頼を受けたある海外ブランドの婦人用帽子が、数万個の大ヒットとなったのだ。
現在、製造のほとんどは福島県にある自社工場で行っているが、種類によっては得意とする提携工場や職人に振り分けている。先に触れたハンチング帽子は都内の熟練職人が、ニット帽子は関東近郊の工場が請け負い、凝った花飾りがついたシルク帽子はタイの工場が製造する。
「帽子の良しあしは全体を眺めた時のラインに出ます。いい帽子は何ともいえない美しい丸みがある。帽子作りは手作業が非常に多い代物ですから、作り手によって仕上がりの差が大きく出ます。弊社の製品をご覧いただけば、作りの良さが分かっていただけると思いますよ」
型作り、裁断、縫製までを一貫して自社で手がける

作業場にぶら下がるたくさんの型。同社の歴史を物語っている(最上段)。現在、型作りを一手に引き受ける佐藤みゆきさん。台東区の優秀技能者に認定されている(中段)。サンプル品の制作も佐藤さんの担当。量産した時も作りやすい工程を考える。(最下段)。
帽子作りの要となる「型」の製作は、社長夫人である佐藤みゆきさんが担当している。台東区の優秀技能者に認定されている佐藤さんは、依頼主から渡された簡単なデザイン画を頼りに平面図を書き起こし、ボール紙でパーツごとに「型」を作る。型作りの手順は、まず、デザイン画を見て頭の中に「今まで作ってきた中で近い図面」を浮かべる。必要なゆるみやダーツなどを大まかにイメージして、実際の図面に描き起こしていく。型作りの大前提は「縫いやすく、誰が縫っても同じ仕上がりになる型」にすること。依頼を受けたデザインによっては、同社が大切に保存している古い木型を参考にしたり、頭部の模型に薄い綿布をかぶせて、立体裁断したものを元に型を起こすこともあるという。
佐藤さんはサンプル製作も担当するため、起こした型を元に生地を裁断し、縫製、仕上げまでを手がける。一連の工程を脇で見ていると、流れるようなスピードで進み、手つきに思わず見とれてしまうほどである。
「今の時代、型作りから裁断、縫製までを自社で行っている帽子メーカーは少なくなってきましたが、当社では変わらないスタイルで、安定した品質を保っています。近ごろは帽子をかぶる若い方も増えてきました。ぜひ一緒に新しい時代の帽子作りをお手伝いさせていただければうれしいです」と佐藤社長は話す。創業から約1世紀の老舗は、次の世紀も真摯(しんし)な帽子作りを続けるに違いない。
株式会社サトー 会社概要
■事業内容 |
帽子製造 |
■代表者名 |
佐藤 清 |
■OEM担当者 |
星野 喬 |
■資本金 |
1000万円 |
■従業員数 |
14人 |
■所在地 |
〒111-0053 台東区浅草橋5-1-25 |
■電話 |
03-3851-8136 |
■FAX |
03-3861-6569 |
■取扱品目 |
帽子全般 |
■自社ブランド |
BEEX、10 O'CLOCK |
■メールアドレス |
sato_hat5125@tctv.ne.jp |